ドイツで生活し、仕事や手続きも問題なくこなせるレベルになった。
C1にも合格し、日常では困らない。
それでも、小児科の診察室では別です。
1歳児の健診と予防接種。
言語的に、予想以上に負荷が高い。
医療現場のドイツ語が難しい理由
診察室のドイツ語には、3つの特徴がある。
① 省略が多い
② 専門語が多い
③ スピードが速い
しかも、子どもを診ながら話されるため、会話が断片的になる。
例
„Motorisch altersentsprechend, sprachlich im unteren Normbereich, beobachten wir weiter.“
(運動機能は年齢相応、言語はやや低めの正常範囲なので、経過観察します)
一文は理解できる。
しかし、即時処理は別問題なのです。
C1でも聞き取れなかった表現
実際に戸惑った表現。
発達評価に使われる言葉
- altersentsprechend
(年齢相応) - grenzwertig
(境界線上・ギリギリ) - unauffällig
(異常なし) - behandlungsbedürftig
(治療が必要) - abklärungsbedürftig
(精密検査が必要)
「問題ない」以外のグレー表現が多い。
予防接種の説明で出てくる言葉
- Auffrischungsimpfung
(追加接種・ブースター) - Impfreaktion
(ワクチン反応) - Lokalreaktion
(局所反応・注射部位の腫れなど) - systemische Reaktion
(全身反応・発熱など) - fiebersenkend
(解熱作用のある)
単語は知っていても、連続すると処理が追いつかない。
「曖昧表現」が最大の難所
ドイツの医師は、断定を避ける。
よくある表現
„Im Moment sehe ich keinen akuten Handlungsbedarf.“
(現時点では、緊急に対応すべき必要はありません)
意味は:
👉 今は問題ない
👉 でも将来は不明
日本語感覚だと誤解しやすい。
C1向け:聞き返しテンプレ
遠慮は不要。必要。
内容確認型
„Heißt das konkret, dass … ?“
(つまり、具体的には〜という意味ですか?)
„Verstehe ich richtig, dass … ?“
(〜と理解して合っていますか?)
リスク確認型
„Gibt es aus Ihrer Sicht ein Risiko?“
(先生から見て、リスクはありますか?)
„Ab wann sollte ich wiederkommen?“
(いつ再診すべきですか?)
薬・処方確認型
„Auf welches Gewicht bezieht sich die Dosierung?“
(この量は何キロ基準ですか?)
👉 Dosierung(ドズィールング)=薬の用量ルール。
体重に基づく量・1回量・回数・上限をまとめた決まり。
「この子に、どれくらい・どのくらいの頻度で与えるか」という意味。
„Was ist die maximale Tagesdosis?“
(1日の最大量は?)
医療ドイツ語で重要なのは「語彙量」ではない
重要なのは:
・要点を抜き出す力
・曖昧さを翻訳する力
・質問で主導権を取る力
語彙はすでに足りている。
足りないのは「交渉力」だ。
母語で考えてからドイツ語にしない
診察室では:
考える → 翻訳 → 発話
は間に合わない。
「型」を入れておく方が速い。
C1母のための必須フレーズ
- „Was bedeutet das konkret für den Alltag?“
(生活上、具体的にどう影響しますか?) - „Muss ich jetzt etwas ändern?“
(何か変える必要がありますか?) - „Wie dringend ist das?“
(どれくらい緊急ですか?) - „Was wäre der nächste Schritt?“
(次に何をすればいいですか?) - „Gibt es Alternativen?“
(他の選択肢はありますか?)
これだけで主導権が変わる。
一人で行くという負荷
語学+育児+医療判断。
これは三重負荷。
できて当たり前ではない。
結論
C1でも、医療現場では初心者に戻る。
それは能力不足ではない。
専門領域に入っただけだ。
対応策は3つ
・曖昧語を見逃さない
・必ず具体化させる
・質問で主導権を取る
ひとまず、これができれば、十分。